Tencent Cloud「生成AI実践ワークショップ」にMetelix CTO佐藤マイベルゲン玲が登壇しました

2026年7月10日(金)、東京・御成門で開催されたTencent Cloud主催「生成AI実践ワークショップ」に、株式会社Metelix 取締役CTOの佐藤マイベルゲン玲が登壇しました。

佐藤は現在、Metelix取締役CTO、RHEMS Japan代表取締役、Tencent Cloud Resellerを兼務しています。インフラ・セキュリティ分野での16年にわたる経験と、複数の企業経営に携わってきた経歴を持ちます。当日は、AIバディ「RiN Family」(弊社Metelixが開発する、業務を実際にこなすAIエージェント)の開発現場で見えてきた課題を交えながら、技術と経営の両面から「AIを一時的な取り組みで終わらせず、組織に根付かせるには何が必要なのか」についてお話ししました。



世界はすでに「コスト」で動き始めている

生成AIの活用が広がるにつれ、多くの企業で新たに顕在化してきたのが「コスト」の問題です。AIエージェントに任せる業務が増えるほど、消費するトークン(AIが処理する文章の量に応じて発生する利用料の単位)も積み上がり、月々の支出として重くのしかかってきます。


こうしたなか世界的に見えてきたのは、最先端モデルの高い性能をそのまま使い続けるのではなく、用途に応じてオープンウェイトモデル(モデルの重みが公開され、自社の環境でも運用できるLLM=ChatGPTのような文章生成AIの"本体"。利用方法によってはコストを抑えやすい)を組み合わせ、支出を抑えながら実用性を確保していこうという流れです。用途やコストに応じて複数の大規模言語モデルを使い分けるこの考え方は「マルチLLM」と呼ばれ、いま世界的に広がりつつあります。


コスト効率に優れた大規模言語モデルは、最先端の大手モデルにおおよそ1年ほど遅れて追いついてきます。裏を返せば、日常的な業務であれば、いまのこうしたモデルでも十分に実用的な性能に達しているということです。しかもコストは、大手モデルのおよそ10分の1程度に収まります。

性能では1年遅れても、日常業務では困らない。そのうえでコストが10分の1になるのなら、すべての処理を最先端モデルでまかなう必要はありません(※)。これが、RiN Gatewayで用途ごとにモデルを振り分け、オープンウェイトモデルを積極的に組み込んでいる背景にある考え方です。
(※)「1年遅れ・10分の1」という水準は、当日の登壇で示された見立てです。

「とにかく一番賢いAIを使う」から「業務に必要な性能を、最も無理のないコストで使う」への発想の転換は、これからAI活用を本格化させる企業にとって、避けて通れない論点になっていくでしょう。

なお、オープンウェイトモデルは「危険だから避ける」「安全だから採用する」という単純な話ではありません。重要なのはモデルの出自ではなく、用途や能力に応じた安全性評価とガバナンスです

実際にAnthropicも、オープンウェイトモデルを一律に禁止すべきではなく、十分な能力を持つモデルはオープン・クローズドを問わず適切な安全性評価を行うべきだとしています。


16年のインフラ経験から辿り着いた結論

AIエージェントの会社を作ろうと、当初から考えていたわけではありません。それでも、長くインフラに携わってきたからこそ見えてきたことがあります。

AIの「賢さ」そのものは、すでに誰でも手に入るコモディティになりつつあります。本当に難しいのは、そのAIを組織の中に安全かつ継続的に配置する「仕組み」。この考えを形にしたのが、RiN Family(企業向けに、AIエージェントを部署ごとに"配属"して運用できるプラットフォーム)です。


多くの企業が「試す」段階を越えられていない

生成AIというツール自体の普及は進んでいます。しかし、業務を自律的にこなすところまで到達している企業は、まだ多くありません。

SB C&S株式会社が販売パートナーを対象に実施した調査によれば、生成AIの本格導入について「関心は高いが具体化は少ない」が52.5%、「PoC・試験導入が増えている」が19.0%、「まだ限定的である」が21.2%を占め、これらを合わせると約7割(71.5%)が関心・検証の段階にとどまっています。(出典)

一方で「本格導入が進んでいる」と答えたのは7.3%にすぎません。「AIを触ったことはある」企業は多くても、「AIに業務を任せている」企業はまだごく一部、というのが実態です。

課題は導入の入り口だけではありません。同じ調査で、AIインフラの運用面で最も負担が大きい項目として「運用人材の不足」を挙げた回答が70.4%(複数回答)と突出しています。導入したAIを日々動かし続ける体制づくりにも、大きなハードルがあることがうかがえます。

「個人利用が先行している」「社内データの扱いが不安」「費用対効果が見えない」「現場に定着しない」。突き詰めると、ボトルネックは一つ。LLMの出力を"実務で使える形"に変換するインターフェースの欠如です。

出典: SB C&S株式会社「企業のAI活用を支えるインフラ整備の実態調査」

(2026年4月23日公表、販売パートナー179人対象・2026年2〜3月実施) https://cas.softbank.jp/information/260423_01/


企業のAI活用は、3つの段階で整理できます。

・STAGE 1「使う」:個人がChatGPT等を試す段階。成果は使う人次第で、多くの企業がここで足踏み。

・STAGE 2「管理する」:情報の範囲・記録・費用を会社として統制し、仕組みとして使い続ける段階。

・STAGE 3「AIで会社を運営する」:AIが各部署に常駐して業務の一部を担い、人は判断と承認に集中する段階。


Metelixが目指すのは、仕組みと伴走支援の両面で、企業をSTAGE 3まで引き上げることです。


コストの現実と、Tencent TokenHubという選択

RiNに数千万トークン規模を投入して運用する中で、コストの課題が改めて浮き彫りになりました。AIの世代交代が数か月周期で進むいま、単一のAIに依存すること自体が経営リスクになり得ます。

そこでRiN Gatewayでは、Claude・ChatGPT・Geminiなどの最先端モデルから、オープンウェイトモデルまで、複数の選択肢の中から用途に応じた組み合わせに振り分けます(マルチLLM)。その送り先の一つが、Tencent TokenHub(Tencent Cloudが提供する、各種LLMを一元的に利用・管理できる"仲介"サービス)です。

Tencent TokenHubを選んだ理由は3つあります。

・コストパフォーマンス:実務に十分な品質を、低いトークン単価で実現できる。

・データ取り扱いポリシーが明確:TokenHubは入力データを「AIの出力を得る目的」のみに使い、DPSA・プライバシーポリシー・AIサービス規約でその扱いを明文化。入力データの利用条件が公開されている点が決め手になりました。

・オープンウェイトモデルへの関心:用途に応じて複数のオープンウェイトモデルを活用できる環境を評価しました。実務で利用可能なモデルの選択肢が広がっている点もその一つです。


複数のオープンウェイトモデルについても継続的に検証を行い、日本語性能や実務適性の向上を確認しています。用途によっては十分に業務で活用できるケースも増えてきました。必要なのは最先端の賢さより、誰もが使えるUIと、確実にタスクを終える力。高価なトークンをあえて使い続ける必要はありません。


セキュリティは「受付・警備・記録係」が担う

コストと同じく重要なのが、安全性です。そこを担うのが RiN Gateway(AI利用の"入口"に立ち、誰が・何に・いくら使ったかを管理する仕組み。会社でいう受付・警備・記録係のような役割)です。

・監査ログを、RiN本体が触れない"別室"にすべて記録・保存。

・電話番号・マイナンバー・クレカ番号などの個人情報は、AIに届く前に検出・ブロック。

・RiNごとにバーチャルキーを発行し、利用状況を可視化。予算上限に達すると自動停止。

AIを社内の各部署に配属していくうえで、この仕組みは前提条件となります。


おわりに

AIの賢さは、買える。しかし、組織に根付く力は、買えない。

生成AIの導入自体は、もう難しくありません。本当に難しいのは、それを一過性のブームで終わらせず、日々の業務に根付かせることです。そのためには、AIモデル単体の性能だけでなく、コスト・セキュリティ・運用体制まで含めて「仕組み」としてデザインする視点が欠かせません。

今回ご紹介した「賢く動かす(RiN Family)」「安全に管理する(RiN Gateway)」「コストを最適化する(Tencent TokenHub)」という組み合わせは、私たちが自社でトライ&エラーを重ねながら辿り着いた一つの現実解です。

Metelixは今後も、現場で自ら使い倒して得た知見やノウハウを包み隠さず発信し、企業の「AI活用を実務へ根付かせる挑戦」を応援してまいります。



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会社概要

株式会社Metelix

所在地:東京都渋谷区渋谷三丁目27番1号 VORT渋谷east II 

代表者:代表取締役CEO 久坂祐介

設立:2019年6月 

事業内容:AIプラットフォーム事業、AIトランスフォーメーション事業、クラウド&AIインテグレーション事業 

URL:https://metelix.jp/

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